漢方では、疾病の発症や悪化を生じる外部からの刺激(外邪)を外感六淫
(風・寒・暑・湿・燥・火)
としています。また、体の中の不調により外邪に類
似した症状を引き起こすものを内生五邪といいます。この中で、風のような症状(目眩、震え、痙攣、痒み)を内風といいます。其
の一方で、六淫の風は、外風ともよばれます。内風
による痒みを生じる皮膚
疾患は、臨床上、多く見ら
れます。外感六淫と内生
五邪は、互いに影響し合い、内生五邪を生じている場合、それと類似の六淫を感受しやすい(同気
相求)と考えられています。例えば、「普段から冷えのある人(内寒)は、寒さ(外寒)の影響を受けやすい。」などです。 アトピー性皮膚炎の女
性Aさん「患部の赤みは
強くないが、乾燥が顕著
で白い薄片がポロポロ落
ちる。痒みは強く、掻いても汁は少ない。髪なども
乾燥しやすく、パサパサする。」などの血虚風燥の
症状が主で、普段は、当帰飲子などで落ち着いていますが、春先の花粉が飛ぶ頃になると悪化してきます。
血虚風燥による内風があるため、春の主気である外風の影響を受けやすいと考え、当帰飲子と玉
屏風散を併用していただくことにしました。
「今年は、花粉が飛んでも痒くならず、とても楽です。」と喜んでいただけました。
アトピー性皮膚炎の治
療には、いろいろな漢方
理論を駆使して、臨機応変で、細やかな対応が必
要となります。「アトピー
には、○○湯!」などという単純なものではありません。他の疾患も同様で
すが、一人一人の患部症
状、全身症状、体質、悪化
条件、随伴症状などにより、その方にあった治療方針に基づいた「証」を決定することが重要になります。